◉梅雨真っ只中の植物たち

ムワッとする梅雨の湿気の中、雨が上がったので近くの徳里山まで歩いてみました。
写真の左上から順番に植物をご紹介します。

◉ヘクソカズラ(屁糞葛)
その名の通り、葉をすり潰すと臭い匂いを放ちます。植物の知恵ですね。
この悪臭で自分の身を守ったり、一部の昆虫にだけ好かれるようにしているようです。

◉ラセイタソウ(羅背板草)
海辺に多く見られますが、民家の石垣にも普通に見ることができます。
そのゴワゴワした葉っぱですぐに見つけられます。
『ラーセタ』というポルトガル語が語源だそうです。ラセイタとは、羅紗(ラシャ)に似た毛織物で地合が薄く手触りのやや粗いものをいうのだそうです。葉がその毛織物の肌触りに似ているためこの名前がついたのですね。

◉ハマオモト(浜万年青)
島では、「ハマユウ」と呼ばれることが多いと思います。ヒガンバナ科で甘い香りを放ちますが、食べてはダメです。ヒガンバナ科の植物は、下痢や吐き気を伴います。宮崎県の県花だそうです。海辺に多く見られ、花弁が熟すと地面に倒れて、コルク質の種子を波に乗せて子孫を増やすそうで、波に数ヶ月流されても生きている性質があります。

◉シマホタルブクロ(島蛍袋)
キキョウ科で、本州のヤマホタルブクロなどと比べると小さいです。これはヤマホタルブクロがマルハナバチによって受粉されるのに対して、島にはマルハナバチが居ないため、より小さなハチや自家受粉するしかなく、花が小さく進化したと言われています。ヤマホタルブクロは標高が高くなるに連れて、薄紫から紫になりますが、シマホタルブクロは関東地方南部から伊豆諸島に分布するため、標高が低く、白色のものがほとんどです。
昔はこの花の中に蛍を入れて遊んだそうですが、今の時代ではそんな遊びもできそうもなく、子供たちにも浸透しないでしょう。

◉イヌビワ(犬枇杷)
クワ科イチジク属の落葉小高木で、枇杷と同じように食べられますが、枇杷ほど美味しくないためこの名前がついたそうです。イチジク属は寄生蜂と共生することが多く、このイヌビワもイヌビワコバチというハチと共生しています。雄花序の奥には「虫えい花」(花柱が短く不妊)があり、これにイヌビワコバチが産卵します。このハチの幼虫は、花序の中で育ち、雄の成虫はこの花序の中で雌の成虫と後尾して一生を終えます。雌の成虫は、イヌビワの雌花序に入っても受粉せず、雄花序に入ったものだけが産卵し、翌年春に幼虫になります。このように植物と昆虫は密接な関係を結んで共生しているのです。実は薬草でもあり、高血圧予防、消化促進、痔に効果があります。痔には葉っぱをお風呂に入れて使うそうです。

◉アカメガシワ(赤芽柏)
トウダイグサ科で、春に赤い芽が出て、天ぷらにして食べます。美味しいです。整腸作用、便通に効果があるとされ、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の予防にも効くと言われています。日本人は、柏の葉を食器として使用して来ましたが、柏が生息していない地域では、アカメガシワの葉を柏の葉の代用として柏餅を作ったことからこの名前がついたという説があります。

梅雨の間は天候が悪く、なかなか山の上まで行くことができませんが、麓の里でも多くの植物が梅雨の恵みを受けながら夏を待っていることが分かります。

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